2009年から2015年にかけてemilio.jpによって制作された「Macintosh lab(http://emilio.jp/macintoshlab/)」は、Mac OSのデスクトップを「表現の素材」として再解釈した作品です。デスクトップは、私たちの日常生活や仕事に欠かせない馴染み深いデジタル空間であると同時に、データが生まれ、変容し、消えていく「生成の場」としての側面も持っています。インターフェイスは、そのようなデータを操作する上で視覚的な手がかりを与えてくれる、重要な役割を果たしています。emilio.jpの作品「Macintosh lab」では、通常はシームレスで透明であるべきインターフェイスが、その役割を超えて、美を構成する素材として可視化されます。彼は、OSに備わった固有の機能やエフェクトを意図的に変化させ、通常の動作から逸脱させることを試みます。それはまた、Macintoshという特定のデジタル環境の中にある、構造や機能から新しい美学を作りだそうとする試みでもあります。本展ではその「Macintosh lab」をリメイクし、大型LEDディスプレイを用いて展示します。プログラムによる自動操作によって、デジタル環境から生まれる美的な瞬間を捉えるこの作品は、一種のパフォーマンス作品と言えるでしょう。デスクトップという空間の在り方を新たに提示するこの展示を通じて、私たちが無意識に受け入れているテクノロジーの中立性や合理性にある隙間を見つけ出し、そこから新たな視点を提示します。